高重量トレーニングと高負荷トレーニングの違い
- コンディショニング
- 2020.11.30
80代の男性患者Iさん、トレーニングが好きでジムに通うのが日課。フリーウエイト(トレーニングマシンではなくダンベルやバーベルなど) でなかなかの重量を扱いうのですが、フォームの悪さや高重量が影響して肩をよく壊してしまうとのこと。これに悩み、いろいろと病院を渡って当院へお越しになりました。肩の治療を施し動くようにした後、あまり無理してトレーニングをしないよう伝えると「身体を鍛え筋肉をつけるのが、ぼくのささやかな希望なんです」とお答えになりました。
負荷をかけなければ筋肉は大きくなりません。筋肉を大きくするには翌日対象部位が筋肉痛になる程負荷をかけるのが基本です。もちろん高負荷になりますから、それなりにリスクが伴います。
「ささやかな希望…」Iさんの考え方、とても好きです。その考え方に寄り添い、できるだけ肩を壊さないようなトレーニングフォームのレクチャーと「高重量と高負荷」の考え方について説明しました。
上半身のうち、胸、背中上部のトレーニングはすべて肩を経由します。胸、上背部はトレーニングの内でも花形種目になりますので、肩の調子を崩すとそれらができなくなり、トレーニーにとって死活問題です。特にベンチプレスでは肩を壊す人が多いので注意が必要です。
ベンチプレスと肩の障害…https://katosei.com/1945
筋肉を大きくする際、高負荷=高重量とは限りません。
ここを間違えてしまうと、特に40代以上のトレーニー達は怪我で苦しみます。扱える重量が伸びてくるのはトレーニングの楽しみでもあるのですが、高重量を扱えるからと言って、見た目が良いボディービルダーのような筋肉の持ち主かというと、そうとは限らないのです。
それとは逆に、ボディービルダーがオリンピック種目でもある重量挙げが出来るのかというと、選手と競えるほどは挙げられないでしょう。
筋力を強くして扱える重量を増やしたい=高重量トレーニング、筋量を増やしてかっこいい身体作りをしたい=高負荷トレーニング、と考えてください。つまり、自分が何を目標にしているのかが大切になります。
扱う重量を伸ばしていきたいという目標であれば、高重量を扱ってトレーニングをしていく必要があります。一方、ボディービルダーのような身体になりたいという目標であれば、これは高重量が必ずしも必要となるわけではありません。どちらも怪我のリスクは伴いますが、高重量トレーニングは高リスクであり、高負荷トレーニングはやり方によって低リスクにすることができます。
今回のIさんは目的が「良い身体になりたい」ですので、怪我のリスクが高い高重量種目はたまにでよく、メインとするトレーニングは「高負荷」が最適。高負荷トレーニングとは軽重量でもフォームと1レップの秒数、回数で追い込んでいくトレーニングを言います。どちらかというとボディービルの方々はこちらの考え方でトレーニングをする人が多いでしょう。このように高重量でなく、高負荷のトレーニングで筋肉に刺激を与えるのは、筋肥大を目指すトレーニーにとって代表的な「トレーニングテクニック」となります。
この方法で行うと、筋肥大を狙いながらも怪我のリスクをグッと下げられるメリットがあります。
Iさんもベンチプレスでよく痛めていたようなので、トレーニングフォームを指導し、高重量と高負荷トレーニングのすみ分けをよく理解してもらいました。それを指導して以降は肩を痛めなくなり、トレーニングが出来ているとのことです。
80代にもなって、ウエイトトレーニングが原因で肩を痛め、あらゆる病院で「危ないから止めなさい」と言われてきたようです。しかしカトセイはそうはしません。肩を治す目的でIさんの楽しみを奪うのは医療者のエゴでしかないと思っています。何より希望を持って生きることは輝かしさを保つ秘訣ですし、骨格筋を鍛えることは最近になって解ってきた究極の若返りホルモン「マイオカイン」が骨格筋から分泌さるのです。
80代でもフリーウエイトを扱うIさんはトレーニングジムできっとモテモテ。今後も向上心と艶をもち、楽しく続けてほしいです。