ベンチプレスと障害 肩の障害について2
- 肩・腕・肘の症状
- 2020.03.30
前回更新した記事「ベンチプレスと肩の障害1」多くの方の目に留まったようです。やはりトレーニングをする多くの人たちにとって、ベンチプレスと肩の障害は立ちはだかる壁であるということなのでしょう。
前回記事「ベンチプレスと肩の障害1」
https://katosei.com/1945/
今回は肩を壊さないための私が勧めるトレーニング方法をご紹介します。
ベンチプレスの可動域の中で、肩の故障に重要な関りを持つ運動が「水平伸展」という運動です。この水平伸展は平均で30度ぐらい(個人差あり)の可動域を持ちます。
しかしベンチプレスはその基本的な指導方法として、バーベルを肩幅に握り胸まで落とし、胸筋ストレッチを最大限に経てからプレスするといった内容で教えます。そこには個人個人の水平伸展可動域を考慮した指導はありませんので、胸板の厚さによって水平伸展可動域30度以内に収まるのか、30度以上にストレッチを強要されるのかが決まってきます。
つまり、胸板が薄い人のほうが薄いほどに可動域を強要されることになるわけです。私なんかは元々ガリガリの人間でしたから、高重量を扱う事に憧れをもっていたものの、挑戦する度いいところで肩を痛める、の繰り返しでした。それでもベンチプレスがしたかったので、若いときにたどり着いた答えはワイドグリップベンチプレス。
バーをワイドで握るだけで、ずいぶん肩の可動域を少なくすることができ、またレップする距離が短くなる分高重量も挙げやすくなります。
肩の可動域を守りながら効率よく胸筋を鍛える
男性が身体を鍛える理由の大きなポイントは「かっこいい胸板」が作りたい、という方が多いでしょう。
それを鍛える代表的なトレーニングがベンチプレスという事になるのですが、説明してきたように肩に大きく負担がかかり、あまり初心者向けではないと私は考えています。
それでは肩の可動域負担を担保しながら効率よく胸を鍛えるにはどのような種目があるのでしょうか。
1.マシンチェストプレス
様々なマシンメーカーがありますが、座面のみでなく背面位置調整ができるものをお勧めします。さらにスタート時にグリップ位置を前に押し出せるフットペダルがあると理想的です。
まずは軽重量でプレスしてみて、自分の胸筋にしっかり刺激がくる位置を探します。その位置に合わせるように、座面高さと背面位置を調整して使用しましょう。背面位置は肩関節が30度の水平伸展を越えない位置に調整します。(※30度は平均可動域なので個人差あります)フィニッシュポイントからスタート地点に下げてきたときに脱力させないのがポイント。これは筋トレ効率を上げるためにも肩を壊さないためにも重要な点となります。
フォームは美しく、1レップは全部で6秒以上かけてゆっくり行うようにしてみてください。回数は10~12回で追い込める重量設定が理想です。推奨セット数は2~3セットでオールアウトに調整。私のおすすめマシンはノーチラスEVOです。刺激が逃げづらく、かつ可動域を守りやすくできています。ゴールドジムはこのマシンを設備しているところが多いです。EVOのインクラインも秀逸です。
Nautilus|ノーチラス
http://www.thinkgroup.co.jp/think_products/brands/nautilus/index.html
2.ダンベルプレス
ダンベルプレスのいいところは、バーベルと違いお互いが独立してあるところにあります。肩の関節可動域は同じ人間でも左右まったく同じ可動域ではありませんから、そこを活かすことができるのです。
しかしダンベルプレスはフリーウエイトであり、胸に効かせるには慣れとテクニックが必要ですから、最初のうちはマシンで鍛え、ダンベルは軽い重量でフォームづくりから始めることをお勧めします。結果的にそれが一番効率的に鍛えることができるようになります。
フォームが固まってきたらメイン種目としてセットを組んでみてください。下げる位置を水平伸展30度以内に止め、そしてゆっくりとレップしフィニッシュポイントまであげましょう。
重量設定も10~12回繰り返せる重量でトライしてみてください。推奨セットはおなじく2~3セットです。
3.バーディップス
バーディップスはこれまで説明した水平伸展とは違い、肩関節伸展運動が大きく影響するトレーニングです。平均可動域が50度ですから、これを越えない様に身体を下げていくと良いでしょう。回数も同じように10~12回で限界を迎えられるのが理想的です。
推奨セットは2~3セット。12回を余裕で越えてレップしてしまう方は腰に重りをぶら下げると良いでしょう。ディップスで重りを追加するにはディッピングベルトといって専用のベルトがあり、これにプレートをつけることができます。
逆に体重があって10回に到達しない方はディップスアシストマシンがありますので、これを使うと良いでしょう。
画像出典元ディップス参考サイト
http://muscle.holdings/dips/
4.スミスマシンベンチプレス
スミスマシンを利用してベンチプレスを行うと、フォームを調整しやすく故障が少ないです。水平伸展30度以内(自分の肩最大水平伸展以内)にバーをおろす位置を最優先するため、必ずしも胸にバーをつける必要はありません。
許容できる伸展位まで下げたら、フィニッシュポイントまでバーを挙げれば良いのです。スミスマシンは、ベンチもインクラインもデクラインも、バリエーション豊かに安全に行え、フリーウエイトに近いので高重量も扱えます。その分フォーム作りが必要ですので、正しいフォームを体得してから高重量に挑戦していきましょう。
それでもベンチプレスがやりたいのなら
それでもベンチプレスがやりたいという気持ちはすごく解ります。扱う重量が伸びてきやすいので筋力アップしている実感が湧きやすいですし、高重量を扱えることで優越感にも浸れる、トレーニングの花形種目ですから。
しかし肩を壊すことが多いのであれば、先ほどご紹介したようにグリップをワイドで行う事、そして反動はつけない事、またワイドでも最大水平伸展時に負荷を強く感じるなら、スクワットに使うバーベルパットを巻く、または胸に折りたたんだタオルを引いて可動域を調整してみてください。
40代は可動域を担保しながら綺麗なフォームで
肩を壊さない胸筋トレーニングの代表的な種目を紹介しました。私自身も紹介した種目は現在も活用してトレーニングをしています。あれだけ好きだったベンチプレスも現在はほとんどやらなくなりました。
もちろんベンチプレスのような高重量トレーニングを取り入れたほうが筋肥大も効率よいのかもしれませんが、肩を壊してしまうリスクを考えると、継続的にトレーニングができていたほうが良いと判断したのでやらなくなりました。
本気で取り組むトレーニー達は、どうしてもトレーニングを効率よくと考えると、関節可動域をできるだけフル活用するストレッチが必要と考えがちです。何度も言うように若いうちはそれで大丈夫ですが、30代も後半になってくると靭帯の弾力性を失ってきますので同じようなトレーニングをすると故障の原因になります。
心当たりある方は、それが原因で長期離脱、あるいはトレーニングを止める…といった事が少なくなるように、今回の記事を参考にして肩の健康を保ちながらトライしてみてください。