加圧トレーニングは有効なのか?
- コンディショニング
- 2014.11.17
加圧トレーニングと聞いて、知らない人はあまりいない程認知度が高くなりました。
これが出始めたのは、今から20年も前になるかもしれません。私自身も運動歴が長いことから、今まで専門家の元、2~3回加圧ベルトを巻いてトレーニングをした事があります。
腕の上部をベルトで締めて、軽めのダンベルでトレーニングを行うと、かなりの痛みや充血を感じながらレップを繰り返しました。
トレーニング終了後、しばらくしてから上腕に内出血斑がポツポツ出ていて心配になり「これは大丈夫なんですか?」と聞いたものです。
トレーナーさんに勧められるも、当時は学生でお金がなかったものですから別料金のかかる加圧トレーニングはやらず、王道の方法でトレーニングを続けていました。
それから自分とは無縁と思って気にもしてなかったのですが、最近ジムで加圧トレーニング後に調子を崩していた方を見かけました。それ以来「加圧トレーニングは危険なのではないか?」と疑問を思うようになり、色々調べていました。
検索していると、ほとんどは加圧のベネフィットばかりでしたが、ご自身もボディービルダーである外科医の先生が、加圧トレーニングの危険性について警鐘を鳴らしていました。今回の記事はその医師の記事を参考に綴ってみたいと思います。
血液の特性と加圧トレーニング後の内出血斑について
そもそも血液と言うのはとても固まり易くできているものです。
血液が流れているからこそ血栓と線溶(血栓を溶かすこと)を滞りなく繰り返しているのに対し、四肢の根元をベルトで締めて、一時的に血行量を遮断に近い状態にするわけですから、血管内にはかなりの負担をかけ、血液は凝固しやすい状態になります。ベルトを緩めたときの、皮下に斑点(赤、紫色など)が起きるということは、血管の壁が傷ついて、壁そのものが破壊されていることです。
つまり破壊部位を中心に血液が漏れ(出血という)、それを直し防ぐために“余計”な炎症や血栓生成にエネルギーを注ぎます。それでは筋肉を作るためにタンパク質が使われるのではなく、炎症や出血修復に“浪費”されてしまうことになります。
加圧後顔が蒼白になっていた方に起きていた事
私も経験しましたが、ベルトを巻いてトレーニングした後、しばしば大量の汗と動悸を伴います。
それは、血管の中に修復の副産物としてできた血液の塊(血栓)があちこちで詰まっているのを必死で流れ溶かそうとしている証拠です。その作業で無駄に心臓に負担をかけてしまい動悸や大量の汗を伴うのでしょう。
血栓の詰まった場所がもし、肺の大きな血管だったり、あるいはすり抜けた場所がもっと大切な臓器だったりした場合、取り返しがつかないリスクを負います。症状が出るのはトレーニングを終え数分後に起こり、心臓の負担から意識が遠のく可能性は十分考えられる訳です。
この方もおそらくこの事が起因して、加圧トレーニング後に調子を崩された可能性が高いと思います。
もしこの時に大きな血栓がバイタルに関わる肺などに詰まった事を考えると大惨事になっていた可能性があるということです。
幸いにも大事に至らず、しばらく休んだ後体調を戻して自力で帰られたようです。
トレーニングは何のために
しかし、加圧トレーニング後に皆さんが倒れる訳ではありません。多くの人は無事です。実際は短時間でメキメキ効果を出せるものなのかもしれません。しかしこれを実証しようとしても、人間の筋肥大に対し加圧ベルトを使用した場合としない場合で比較しようとも、すでに時間は経過しているので正確に計れる世界ではありません。その分トレーニング効果を煙に巻くこともできるし謎めかせる事も出来ます。
ただ、内出血斑はほとんどの場合に見られ、動悸も起きやすいのは確かです。
目の前で人が体調を崩したのも確かです。これには理屈があり、先ほど述べた通りです。
トレーニングはそもそも何のためにあるのでしょうか。
トレーニングは失われた機能を取り戻すためにあり、トレーニングは健康維持の為にあり、今よりも体力をつけ元気になるためにあるものです。
となれば筋肉をつけるためわざわざ循環器系に危険を冒す方法論が妥当なのかどうか疑問に考えます。
上級者が伸び悩んだトレーニング効果に対し、さらにを追求するため加圧トレーニングを選択するなら解りますが、トレーニング初心者がこの方法を選択するのは妥当なのでしょうか。
自分自身にも言い聞かせることですが、物事を考えるときにはリスクとベネフィットを同時に考慮し、冷静な判断をつけなくてはなりません。
これだけ浸透していると無条件に「加圧トレーニングは身体に良い」と誰しも考えているものと思います。ウエイトトレーニングそのものにも言えることですけど、この加圧トレーニングしかり“無害”ではないことを自覚したうえで選択する事をお勧めします。
カトキチでした。