スキー・スノーボードの滑走と関節の潤滑理論 その二
- コンディショニング
- 2014.12.08
【前回記事:スキースノーボードの滑走と関節の潤滑理論 その一】
http://katosei.com/wp/1772/
そもそも、膝を含めて人間の体はなぜこのような構造をしているのかを考えてみましょう。スキースノーボードで言えば、細くてシャープなシェイプはレース向けでキレを良くするためにそのような構造になり、ノーズが太くてテイパードしているような板は新雪の深い雪を楽しむためにそのような構造になります。
さらに言えば、沖縄の家屋は雨風、潮が強いのでコンクリートの家が多く、森で湿気の多い地域は木造にして素材自体が湿気を逃がすような家屋が中心となります。
では人間はどのような環境に適してこのような構造をしているのでしょうか。
他の動物では見られない特徴的なこの構造は、直立二足歩行に適応してこのような形を決定しています。直立二足歩行を成長期に沢山行うことにより、ヒトらしい構造が作られて行くのです。
よく外で遊んでいる子供と、塾とテレビゲームばかりの子供では大人になった時の骨格強度が違いますよね。果たしてどちらが自然界のヒト科として熟成している姿でしょうか。答えは明白です。二足歩行はヒト科を形成する生命活動そのものなのです。
余談ですが、水泳金メダリストの鈴木大地選手は、手の水かきが大きいことで有名だったことを覚えていますか。
成長期に歩くよりも水の中で過ごす時間が長ければ、水の中で生息するのに適応した形に進化していきます。自転車ばかり乗っていれば大腿の筋が発達し丸太のようになりますが、彼らは歩くとすぐに疲れてしまい長時間歩行が出来ません。
さて、話を膝に戻していきましょう。
膝関節はそもそも歩行に適応するように構造されています。歩行による正しい方向の荷重と抜重が繰り返される時、前回の記事で述べた関節内循環が一番良い形で行われています。
しかし、スキースノーボードでなぜ膝の障害が多いかと言うと、ビンディングで板と足を固定し、膝から下が歩行では起こりえない回旋運動を強要されるからです。
例えばモーグルなど膝下の自由度を求められるような競技は、膝関節が休む間もなく回旋運動を強要され、時にクイックな地形を拾ったりすると、許容範囲を逸脱する膝関節の運動を起こしてしまいます。
許容範囲を越えた運動は膝にどのような状況を起こしているかというと、前回記事で述べた牽引力が働いている状況になります。膝がくの字になれば、片方には過荷重になり、反対側は引っ張りが強要されます。それを繰り返し行えば、その内に膝のガタが進み関節内循環も破綻し、荷重要素が重要であった潤滑特性を失い(記事その一参照)水が溜まりやすくなるといった現象を引き起こしていくのです。
さて、このような状態に陥った関節は、当然関節面の滑りが悪いですから、抵抗が強く熱をもっていきます。熱は痛みを引き起こし、さらに関節液の粘りを奪っていきます。逆にいえば、関節液が粘りを失う代わりに熱を処理して重大な関節破壊を防止している姿であり、水が溜まるのは熱を鎮火するために集まった姿とも言えます。
痛みがあってビッコを引いていれば病院に行きますが、概ね病院の対応は「動かさない様に固定具でがっちり固める。」「シップ」を出しておく。「水が溜まれば注射で抜く」が主体の対応です。
前回記事からしっかりと見ていた方は気づいた方もいると思いますが、実はこれ、あまりよくない対応だと考えています。
つづく