スキー・スノーボード競技における首の障害の影響3
- コンディショニング
- 2014.12.22
▼前回までの記事はこちら
【スキー・スノーボード競技における首の障害の影響】
http://katosei.com/1783/
【スキー・スノーボード競技における首の障害の影響2】
http://katosei.com/1786/
むち打ちのメカニズム2
第一頚椎と第二頚椎が、首の回旋の殆どを司っています。
しかし構造上椎間板が無いため、外力の影響を受けやすくバランスを崩しやすいことを前回お話しました。
ここで、車に人が乗っていて左から衝突されたとします。
そうなると身体が左側にグラッと一瞬傾きますね。
その時に、その一瞬のインパクトで先ほどの頚椎はどうなるかと言うと、正常な状態から第一頚椎は第二頚椎に対し、左側にスライドしていってしまいます。(写真正面から見て右側にスライド)
以前にスノーボードの潤滑と生体潤滑理論で説明したように、潤滑材を介して一番滑りやすい状態とは、お互いに押し合っている状態を差しますから、写真のように隙間側は滑りが悪くなります。
【スノーボードの滑走理論と関節潤滑理論】
その一
その二
完結編
つまりこの人は、左を向く事が困難になるわけです。
(左の動きが悪くて右に向けないこともありますが複雑になるのでここでは端折ります。)
ですので、診察の時に、あなたの事故はこういった事故で無かったですか?ということが聞かなくても大体解ります。
余談ですが、病院でよく頚椎牽引をしますね。あれはホント良くない行為なのですが、このことからも牽引が破壊行為ということが解ります。まして、脇に通っている椎骨動脈も一緒に引っ張りますから血流に乱れが生じ、脳梗塞の危険性も出てきます。今すぐ止めて下さい。
これがスノーボードの場合、例えばレギュラースタンスの人が猛スピードで滑っていてヒールサイドターンをしようとした際にエッジが抜け、左の尻を強打したとします。急激にストップがかかりますから、先ほどのトラックのように慣性が働いて頚椎が左に飛びます。
ここでクロスの選手のようにフルフェイスのヘルメットを被っていたら、その重みでさらに強くインパクトがかかり、むち打ちが重症となるでしょう。
しかもスノーボードは生身の身体ですし、尻もちだけの衝撃だけではありませんよね。
スティープなパウダー斜面を踏み外すとゴロゴロと大回転で転がっていきますし、接触後に転倒すれば複雑なインパクトが二時、三時と加わり損傷具合が酷くなります。
そんなことからも、単純な車同士の追突事故よりは、より強烈な損傷になる事が多いと言えます。
この首がうまく動かない状態で競技の練習をしても、目線や首の先行が上手くいきませんから身体全体もロックし、イメージと実際の動きが離れてしまって身になる練習ができなくなります。下手をすると、へんな癖が出来てしまうかもしれません。
おそらく生粋のスノーボーダーは板のメンテナンスを欠かさないと思います。
私なんかも、ワックスをかけている時でさえ楽しんでいます。
しかし、ボードを操っているのは自分です。自分のメンテナンスがまず先にあり、その次に板のメンテナンスがこなければ板の性能も十分に引き出せませんよね。
ですから、競技志向の方で首を患っている場合は、まず十分な頚部の動き(潤滑)を回復させてから練習に臨むべきかと思います。
つづく
※次回は自己修復法について話したいと思います。