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院長コラムcolumn

自然農法農家を目指すTさん50代の変形性膝関節症克服

  • 膝の症状
  • 2022.12.02

今年の初頭に50代の男性が来院しました。30代のころから膝を患い、痛みは段々に増しやがて激痛となって、病院を受診したところ変形性膝関節症の診断がつきました。数々の病院で相談するも解決の糸口が見つからず、手術を勧められたが踏みとどまっていたとのことです。自立歩行、しゃがむのも困難で、患部に手を触れるのも許してくれないほどの痛みと炎症がありました。その痛みに耐え続け15年目のところで当院に来院です。

なかなかの症状ですが、心してかかれば克服できる可能性があることを伝え、治療が始まりました。とても真面目な方で、自宅でのアイシングや体操などの指導内容を熱心に取り組み、激痛だった痛みも少しずつ改善が見え始めたころに、ある相談をされました。

▶併せて読みたいカトセイの変形性膝関節症の考え方
変形性膝関節症について

「先生、ぼくには夢があります。田舎の生きた土を使って自然農法の農家になりたいんです。」という事を打ち明けてくれました。

歩くのもままならず、しゃがむことさえ10年以上も出来なかったわけですから、田舎に引っ越して農家になる事は半場諦めていたことでしょう。治療を始めて3カ月ぐらい経った時のことでした。この頃になると、Tさんには克服できる感触を得てきていたのでしょう。

当方も克服できる可能性が高いと診立てておりましたので
「素晴らしい目標です。自然農法で生きるというのは人として本質的な生き方だと思います。力の限りサポートしていきますので夢を実現しましょう。」と伝えました。

それから月日が経ち、夏も越えるといよいよ症状も克服し機能的にも回復を遂げ、夢の現実味を帯びてきた頃、Tさんはどこの土で農家をやるかを真剣に悩み、またお世話になった仕事先の親方や仲間たち、そして親兄弟に自分の決意を伝えました。

そして10月になって当院は「根本治癒」の太鼓判をTさんに押して治療を終了しました。もう自由に歩けるし、屈伸運動も何回だって出来るので、土を掘るのも収穫も問題なく作業できるでしょう。Tさんは淡路島へと、ご夫婦で夢をかなえに旅立っていきました。

患者さんの数ほどドラマがあるのですが、あえてTさんとの思い出を書き綴ったのには意味があります。自然農法で農家を行うって、究極にまっとうで平和な生き方なんじゃないかなと思っているからです。

食べ物さえあれば生きていけるし、それを自分で栽培できる。世界第一位の農薬大国日本の呪縛から解放され、本物の作物を育てることができます。そして意図して作られたメディアや紙幣に左右されず、平和な心持で暮らしていけるわけです。Tさんの新居地では、農家の仲間たちに囲まれて、必要なものは物々交換で需要供給を満たす事でしょう。静かでゆっくりで平和に流れる時間にTさんの笑顔が思い浮かびます。

日本の農薬使用量は2010年の時点では世界第一位であり、二位の韓国からも圧倒的に高い水準で農薬を使用しています。すでに欧州では危険のため禁止されている農薬も、日本では普通に使われているのです。日頃から食事指導も診療活動に組み込んでいる当方にとっては、この現状はどうしたものかと頭を抱えているわけです。

また戦争は飢餓から生まれます。
現在日本の食料自給率は37%で63%を外国輸入に依存している状態。先進国の中では最低レベルに位置しています。外国に依存している状態は外国の意見に対立できない弱い状態であり、根源的な部分がとても危機的状況と専門家は指摘します。農家の価値を高め、食物自給率をあげることが日本にとって緊急の課題なのです。
日頃からSNSやニュースレターなどを活用して、こういった農薬問題、食糧危機、そして人工甘味料や食品添加物の問題点などを患者さんたちに啓蒙し、安全で身体が喜ぶものを口にするよう指導しているわたしにとって、自然農法を目指す農家さんを応援しないわけにはいかなないし、一人でも本物志向の方を輩出する義務があると、内なる闘志を燃やさずにはいられませんでした。

長い間このような日本の現状は令和の今になってもあまり変わっていません。これを変えるには、多くの日本国民たちが気づいて、Tさんが育ててくれるような自然の作物にニーズがシフトしていけば、そのニーズに合わせて市場が変わり、生きた土で育つ作物がスーパーに並ぶようになるはずです。現実味を帯びるには遠い話なのかもしれませんが、現実味に近づく一つの出来事を達成したことは事実なわけで、多少なりとも誇らしい気持ちです。

Tさんを待合室から見送る際、作物を収穫したら少し分けでくださいと約束しました。どんな作物を育てるのかまでは聞けませんでしたが、もしかしたら夏ごろに生きたお野菜がカトセイに届くのかな。

Tさん、お身体壊さないよう気をつけながら、今後もこだわりの作物をお育て下さい。

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