今回は足のアーチのお話です。足の裏には「土踏まず」という部分がありますね。立位で足裏が地面接触しない部分です。このアーチ部分は足のトラブル等でしばしば話題にあがります。巷には足の専門家…とうたうところや、オーダーインソール専門店など、足に特化した方々も多く見られます。そんな中で、しばしばこのアーチは邪魔もの扱いにされることがあり、アーチを補強するために土踏まずの空間部分を埋める、もしくはサポートと称して押し上げるようなインソールが多いですね。しかしこれって、本当にそうなのでしょうか。700万年の歴史をかけて徐々に進化してきた人類に、そんなに不要な部分があるのでしょうか。今回はその部分に触れてみたいと思います。

レオナルドダヴィンチが絶賛した足のアーチ構造

ところで人の足はすごい機能をもっています。次々と変わる地面情報を、足裏センサーを駆使して脳に伝え、絶妙な足指の力加減やアーチの伸縮を状況に応じて統合的に機能させます。足の裏には身体の中でも非常に多くの神経細胞が集中し、まるで昆虫の触角のように情報を拾い上げ全身に伝える役割をもっているのです。

ルネッサンス時代、芸術家であり生物学、解剖学者(ほかにも多数の功績がある天才)でもあったレオナルドダヴィンチは、人間の足は人間工学上最大の傑作であり最高の芸術作品であると言葉を残しています。天才にそこまで言わせた足の機能。真相はダヴィンチしかわからないところですが、カトキチ的視点でダヴィンチコードを紐解いていこうかと思います。

アーチをかき消すぴったりフィットのインソール

インソールを成形するとき、色々なメーカーごとにもよると思いますが、スポーツシーンで有名な某インソールメーカーの成形は、足を宙ぶらりんにして焼いたインソールを足裏にあて成形します。足裏は地面に接していない無負荷状態ですから、より足のアーチは強い弧の状態を呈しており、その形状に合わせてインソールが出来上がります。

このような成形ソールをはじめ、市販されているようなインソールの多くは、足のアーチを下からしっかりサポートという考えのもと、アーチに隙間ができないように凸型の形状を作ります。それは見方を変えると、このアーチがまるで邪魔者かのような考えでアーチをかき消すように組み立てられています。これは本当に正解なのでしょうか。

ここで考えてほしいのですが、レオナルドダヴィンチが足を最高傑作と銘打ったように、足の形状はすべてが絶妙にバランスして完成しているものです。そもそも足のアーチがいらないものなら700万年の人類史の中でとっくにその形状は廃れ、全人類が偏平足になっていることでしょう。しかし現状はそうなっていません。むしろ、よく鍛え骨格がしっかりしている人ほど足のアーチがはっきりと形成されています。逆に、あまり運動をしないような人たちに偏平足の方が多いようです。特に最近当院に来院する子供たちに偏平足が目立ちます。時代の趨勢で運動する環境が奪われた現代の子供たちの特徴ともいえるかもしれません。

アーチはまるで石橋

まるで石橋構造の足アーチ

アーチ部分の足の骨をよくみてみると、6個の細かい骨がお互いに重なり合って形成されています。踵の骨である踵骨から順に、距骨、舟状骨、内側楔状骨、第一中足骨、基節骨がバランスよく重なり合いアーチを形成しています。当然のことながら足にはネジもボルトも使っていません。絶妙にバランスを成していて、ジャンプして着地し、全体重と重力加速度がプラスされても、崩れず強い衝撃に耐えられるよう設計されているのです。それはまるで石橋のようです。先人の叡智で作ってきた石橋は、江戸時代から明治にかけて多く作られ、平成の現在でも日本中で元気に活躍しています。釘やボルトを使わずに石の形状と重力をうまく活用し、すべての石がバランスし合うことで強固な橋が建造される芸術品ともいえるものです。

この石橋、橋の上をダンプカーが通ってもビクともしないものですが、実は弱点があります。それは、石橋を下からもちあげる事です。特にキャップストーンと呼ばれる頂点の石を引っこ抜くと瞬く間に全てが崩れてしまいます。強固な石橋ではありますが弱点があるのです。

ところで、レオナルドダヴィンチが最高傑作と言った足部の構造は、まさにこの石橋構造を指していると私は思っています。このような石橋構造ですから、もちろん下から突き上げるような力が加わると構造的にバランスを崩しダメージが加わります。

話を元に戻して、現在のインソールの概念は「足のアーチをサポートする」でした。でもこれってちょっとおかしいと思いませんか?石橋に例えれば石橋のアーチをサポートするっていいながら、すでに完成されている橋アーチ部分をセメントなどで埋めるようなものです。ましてやそれが押し上げる様な力ならアーチを壊す方向に働きますからサポートしているようで実は不安定性を促しているように思えます。

スポーツ店に並んでいるインソールの構造をみていると、結構そういったものがゴロゴロしています。コンセプト自体がアーチを埋めるということですから無理もないのですが、良かれと思って悪い方に働くのは本末転倒ですね。

アーチのトラス構造

トラス構造のアーチ

全体重が乗った足のアーチは、まるで石橋のように足の骨が干渉し合い構造を保ち続けていることを説明してきました。それに加えて、足底筋膜というアーチ下部を走る筋肉があるのですが、荷重時にかかる力をこの足底筋が張力を発揮しアーチの受けを強化しています。この一連の構造をトラス構造と言います。

この構造からみても、やはりアーチをサポートといいながらアーチの空間を埋める行為は、トラス構造の受けである足底筋膜の張りを殺してしまうので、感覚的にサポートをしているようで、実は石橋構造を壊し受けの張りまで機能低下さるという、まるで反対の事をしているように思えます。何万円という高いお金を払ってカスタムインソールを作ったりしながらも、なんだか違和感で調子が悪いという人は、このような理由からきていると推察します。

お薦めはあのドラマで有名になった足袋型シューズ

以上の事から、通常生活で履いている靴、またスポーツやウォーキング、ランニング時に履く靴の中に、アーチを埋め尽くすような、ましてや押し上げる方向に働くインソールは個人的にあまりお薦めできません。カトキチがすすめる運動時の靴、それはダヴィンチが最高傑作と銘打った足の形にとても近い形状のものです。最近ではテレビドラマ「陸王」で、主人公が足袋型のランニングシューズで活躍するというシーンがありました。足袋靴は足の機能を極力活かす、日本人が生み出した素晴らしい文化だと思います。

実は10年以上前にナイキからも「エアリフト」というシリーズで足袋型シューズが販売されていました。開発には私の先生が携わっていたのです。また、ビブラムファイブフィンガーシューズといって、足先が5本指に分かれた靴も最近では人気を博し、靴のあり方にパラダイムシフトが起こりつつあると感じています。

現行の考え方からはまるで逆説的な捉え方ではありますが、コラムを参考に色々とお試しになって、体感してみて下さい。

カトキチでした。