五十肩と関節技

五十肩と関節技

ここのところ、五十肩だといって肩が痛み、関節が動かないという患者さんがよくいらっしゃいます。その方々に説明として、柔道や格闘技でみる関節技に例えて話す事があります。代表的な肩、腕の関節技には「腕ひしぎ逆十字固め」や「腕がらみ」というものがありますが、いずれもこれは肩や肘の関節をねじ切る、引っ張るという力が働くものです。

人の身体は、地球全体から個体として最外層の皮膚を境に独立しているもの。筋肉や靭帯は個体を保つために自分の中心に寄せて繋ぎとめている役割があります。皮膚を強く引っ張ったり、腕を引きちぎるような力を加えると、非常に痛みを覚えます。もし皮膚が破けたり腕が切り離されたりすれば、血液が漏出し生物は死んでしまいます。その為、原始的な危機管理能力として、皮膚や筋肉に痛みの感覚器を備え付け、引っ張り力が加わると警報を鳴らす力があるのです。関節技はその原理を利用した格闘術なのです。

関節技は一気に壊し、五十肩は徐々に壊す

さて、五十肩は正式名称「肩関節周囲炎」であり、炎症症状の一種です。肩関節周囲炎の症状定義は

「中年以降(とくに50代に多い)に発生する、肩関節の痛み(疼痛(とうつう))と動きの制限(拘縮(こうしゅく))を伴う病気の総称です。肩関節とその周辺組織に炎症を来すため、炎症を起こしている部位、炎症の程度によりさまざまな症状を起こします。
五十肩の定義についてはいろいろな議論がありましたが、現在では広義と狭義の2つのとらえ方が一般的です。広義の定義では肩関節周囲炎と同じですが、狭義では疼痛と拘縮を伴う肩関節(凍結肩(とうけつかた))のことをいいます。」gooヘルスケアより
https://health.goo.ne.jp/medical/091101000

とあります。

関節技は格闘術ですので、相手の関節を一気に引きちぎり制する技ですが、実は五十肩もこれと同じようなメカニズムで壊していることを皆さんは知りません。関節技は一気に、五十肩は徐々に関節を引っ張られ症状が発生するのです。一回で壊れるものではなく、繰り返しの力で徐々に壊すものですから、本人は何が原因かもよくわかっていないという特徴があります。

具体的な五十肩発生原因

五十肩と関節技

それでは具体的に、日常生活上でどういった問題で起きているのでしょうか。
①同じ手で買い物袋やカバンを持つ
②赤ちゃんやお孫さんが生まれて、持ちやすい手ばかりで抱っこをする
③犬の散歩が日課で、犬に引っ張られることが多い
④仕事上、片手で重量物を持つことが多い
⑤日常生活で、洗濯物を取り上げる程度で肩を水平以上に挙げる機会が少ない
⑥腕を伸ばしたまま重い物を持つ機会が多い

などがあげられます。
毎日の積み重ねなので、本人は痛みの原因に気づけないのですね。共通していることは、ちょっとずつ引っ張られる力「牽引力」が肩に加わり続けているところ。1回2回なら問題ないのですが、これが100回200回となると、エネルギーが蓄積し「質量作用の法則」で問題が噴出します。

簡単に言うと、腕がもげないように繋ぎ止めておく力

牽引力が加わり続けると、繋ぎ止めている靱帯等の繊維がほつれ始め、炎症が発生します。そして痛みを伴い、熱を持ちます。熱を持つと今度はタンパク質を溶かす力がありますから、長期にこれが及ぶと関節の骨成分を溶かして関節内や筋肉内に溶けた骨が流入し癒着の原因になったり塊になったりします。これによって五十肩の症状「肩の運動が制限され、痛みを伴い関節の運動が制限される」が成立していきます。

見方を変えると“それ以上引っ張られると腕がもげてしまうので、固めて動かなくしてしまおう”という防御反応の現れともとれます。

五十肩を治そう

五十肩発生のメカニズムは理解できたでしょうか。一気に関節技をかけられても五十肩になりますけど、徐々に牽引力が加わり続けても、質量作用の法則で五十肩になってしまいます。これを治すには、持続的な牽引力を排除して、肩に正しい荷重をかけ続け、関節の適合を取り戻し、筋力を鍛えて行くことによって克服できます。放っておくと痛みはなくなりますが、固まって自由に動かない肩になってしまいますから、一生懸命抵抗していきましょう。

①代表的な荷重運動腕立て伏せ
股関節の荷重運動にはスクワットがあります。腰や膝、股関節の障害予防に、何かとスクワットは注目され、多くの人が実践しています。一方肩関節には、腕立て伏せがあります。腕立て伏せによって関節適合を取り戻し、同時に筋力トレーニングを実践できます。牽引によって引っ張られた肩のダメージを補う事が出来て、段々と筋力が備わる事で炎症が沈静し、本来の動きを取り戻していきます。尚、膝をついてゆっくりと行います。
※以下正しい運動のやり方はプリントを用意していますので受付にお申し出ください。

五十肩と関節技

②ハイハイ運動が効く
両肩、鎖骨、肩甲骨は連動して動いている関節であり、それは骨盤と恥骨、股関節との関係と相似しています。
四足動物は両足と両腕をうまく連動させて歩いています。人間は二足動物ですが、同じように足の動きと手の動きを連動させて歩行を達成してるのです。しかし五十肩になるとこのバランスが崩れます。そのバランスを取り戻すのにハイハイ運動がとても効果的です。赤ちゃんの時は四足で移動する四足動物。四足動物の時に二足動物になるための準備を整えます。身体のバランスを崩したのなら、もう一度四足動物に戻る事で正しいバランスを取り戻す効果があるようです。

③腕を上に伸ばす
使わなくなった機能は衰えます。中年女性に多い五十肩。それは、普通に暮らしていて腕を回す、上に伸ばすといった運動がほとんどなくなってきてしまう事も起因しています。1日を通じて腕をあげる事は、洗濯ものを干すときと食器を上にしまう時ぐらいのものでしょうか。使用頻度が落ちれば機能は同時に衰えます。治す時は、それに抵抗するように両腕を挙げる訓練をしていきましょう。上に挙がるようになってきたら、今度はお水の入ったペットボトルなど重りをつけて訓練すると良いです。

④腕を振って歩きましょう
腕を振って歩く事も五十肩を治すのには重要です。ハイハイ同様、歩行によって骨盤と肩甲骨のリンクを取り戻すことで治癒速度を高めます。連続で30~40分歩きましょう。

⑤痛みはとにかくアイシング
どのサイトをみても、肩関節周囲炎で炎症症状と書いているにも関わらず、リハビリは温熱療法を勧めています。炎症は読んで字のごとく炎ですから、鎮火させるのが普通の考えです。鎮火には氷でのアイシングです。24時間マラソンでもブルゾンちえみさんの膝を坂本トレーナーが一生懸命氷でアイシングしていましたね。今や氷でのアイシングはポピュラーな対処になりました。肩関節炎もまたしかりです。しつこく痛みが引くまでアイシングを繰り返し行いましょう。

治癒期間について

治る期間は症状の進行具合によりますが、早くて3週間、遅くても約1年頑張れば固まって動かなかった肩も動くようになります。五十肩は治らないと諦めている方がいるようでしたら、当院へご相談下さい。上記のメニューを基に、根本的な回復に向けて一緒に頑張っていきましょう。

カトキチでした。